タイル張りの外壁は意匠性に富んでいて、建物の美観を高めてくれるおしゃれ感や高級感が人気です。しかも、タイル自体に耐熱性・耐火性・防水性があり、耐久性に優れているのもメリットです。
ただし、耐久性に優れているからと言って、メンテナンスフリーという訳ではありません。タイル外壁にも経年劣化はあり、浮き、剥がれ、ひび割れ、破損などが生じる可能性があります。
そこで今回は、マンション外壁タイルの補修工事のタイミングや施工方法、費用の目安などについて詳しくお伝えします。
マンションの外壁タイル補修とは
一般的に「12条点検」と呼ばれている建築基準法の第12条には、不特定多数の人が利用する建物の所有者または管理者に対して、建物の点検が義務付けられています。都道府県によって規定内容は異なりますが、東京都や神奈川県ではマンションやアパートなどの共同住宅もこの対象となっています。
特に外壁タイルは、ここ数年、剥落事故が相次いでいるため、平成20(2008)年の建築基準法改正によって、外壁調査については1年~3年ごとの「目視および部分打診調査」と、10年ごとに実施する「全面打診等調査」が義務付けられました。定期報告を怠ったり、虚偽の報告を行なったりすると、100万円以下の罰金が科せられます。
「要是正」と判定された場合には、早急に該当設備の是正計画の立案や「是正計画書」の作成、所管定期報告窓口への提出などの対応が必要です。そして、「是正計画書」に従って補修工事を行わなければいけません。
外壁タイル3つのメリット
外壁タイルの剥離事故は、近年、台風や地震などの自然災害が多発していることも要因と考えられています。外壁は常に雨風や紫外線にさらされ、その影響を受けており、地震や強風により外壁に歪みが生じる可能性があるからです。また、目地などから雨水が染み込めば、タイルの剥がれやひび割れの原因となります。
ですが、本来、タイル自体は粘土または無機質の原料を成形し、高温で焼き固めた建材ですから、非常に耐久性に優れています。そのほかにも、外壁タイルは以下のように魅力的な特長を持つメリットを備えています。
①耐久性に優れて強度が高い
外壁タイル自体は、約30〜40年の高い耐久性を持つとされています。外壁タイルの耐久性の高さを細かく分類すると、以下のような特長になります。
耐候性 | 太陽光・温度・湿度、雨等の自然環境に対して劣化を起こしにくい |
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耐傷性 | 砂やほこりといった外壁を傷つける外的要因に強く、傷つきにくい |
耐汚性 | 雨水で汚れが落ちやすく、タイルに浸透しにくく、簡単に拭き取れる |
耐水性 | 雨水が浸透・通過しにくく、飛沫や噴流にも強い |
耐熱性・耐火性 | 高温で焼成されているので、熱や火災に対しても耐性を持つ |
②メンテナンスにかかる費用が比較的少ない
外壁材として一般的なモルタルの耐用年数は約10年〜15年、サイディングは約30年、タイルの耐用年数は約40年とされています。
そのため、しばしば外壁タイルは「メンテナンスフリー」などと言われますが、タイルの貼り付けに用いられる接着剤や目地材の耐用年数は10年程度が目安。ですから、タイル外壁も約10年に一度はメンテナンスが必要です。
ただし、タイルは目地のメンテナンスのみで済むので、ひび割れ補修を含む塗り直しが必要となるモルタルや、広い範囲での張り替えを要するサイディングに比べ、メンテナンス費用は低く抑えられるとされています。
③デザイン豊富で高級感がある
タイルは色・柄・サイズ・質感も豊富。外壁はもちろん、内装にも用いられるほど、多彩なデザイン性が魅力です。粘土、陶土、石英や長石、セラミック、大理石、セメント、瓦などを原料として用いることもあり、重厚感や高級感のある仕上がりを生む外壁材として人気があります。
明治初期、明治政府は江戸から東京へと首都の大変革を図りました。そのひとつが、東京の建物をすべてレンガ家屋に建て替えるという遠大な構想でした。しかし、この計画は地租改正という税制改革の前に挫折しました。
さらに、レンガ造りは大火には強いが、地震には弱いということが関東大震災によって露呈してしまいました。そして、この頃から、明治維新による洋風建築ブームでレンガ外壁とともに内装用として人気を博していたタイルが、外壁材としても多く用いられるようになったと言われています。
【見逃してはいけない】マンション外壁タイルの耐用年数と補修タイミング
タイル自体は約40年の耐久性があります。しかし、タイルを外壁に貼り付ける接着剤や目地を埋めるシーリング材の耐用年数は5年〜10年、長くても15年と言われています。
マンションの大規模修繕工事も10年〜15年のサイクルで行うオーナーさんや管理組合が多いので、その際に外壁タイル工事も含めて行うのが最も効率的でしょう。とは言え、外壁タイルに以下のような劣化症状が現れたら、大規模修繕までのんびり待つ訳にはいきません。
劣化の種類で異なるタイル補修の施工方法
過去には、外壁タイルが落下し、通行人の頭に当たってケガをさせてしまったという事故も起きています。外壁タイルに以下のような劣化サインを見つけたら、早急に点検・補修されることをおすすめします。
色あせ・変色 | 紫外線の影響により塗料に含まれる顔料が浮き上がるため |
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白華現象(エフロレッセンス) | 下地から溶け出した物質がタイル表面に染み出し、乾いて固まり白く汚れる |
浮き・剥がれ | 下地や接着剤の経年劣化・施工不良などによって起こる |
ひび割れ・破損 | タイル自体は耐久性があるため、下地や接着剤の経年劣化・施工不良、地震や台風による建物の歪みが原因と考えられる |
特に浮き・剥がれやひび割れ・破損は落下事故を起こす可能性があるので、即時補修が必要です。
補修が必要なタイミングとは?
色あせ・変色、白華現象、浮き・剥がれ、ひび割れ・破損といった、劣化のサインが表れた場合はすぐにでも補修工事を行うべきです。しかし、いずれのサインも見当たらないといった場合でも、建築基準法に従って10年に1回は検査が必要とされています。少なくとも大規模修繕時には検査と修繕を行うことをおすすめします。
万が一、外壁タイルの落下事故が発生し、通行人にケガを負わせてしまったら一大事です。原因はマンション所有者や管理組合が適切な点検やメンテナンスを怠っていたためとなれば、オーナーや区分所有者で損害賠償責任を負うことになります。場合によっては訴訟問題になることも考えられますし、トラブルのあったマンションとなると、資産価値も下落してしまうかもしれません。
マンション外壁タイル補修の3つの施工方法について
タイルの劣化症状によって、補修の仕方は異なり、大きく分けて3つの方法があります。緊急性の高い劣化に対する補修方法から順番にご説明しましょう。
①外壁タイル部分剥落防止
エポキシ樹脂タイル固定 | エポキシ樹脂注入 |
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タイル表面に直接穴をあけ注入口付アンカーピンを挿入し、さらにエポキシ樹脂を注入することで外壁タイルの落下を効果的に食い止める方法です。 | 外壁タイルや下地モルタルの浮き箇所に部分的にエポキシ樹脂とステンレスアンカーを併用して浮き部分の剥落を防止します。 |
タイルにひび割れ・破損がある場合は、その症状が現れているタイルを1枚1枚貼り直します。
②外壁タイルの防水工事
外壁タイルに浮き・剥がれがあり、さらに雨漏りが生じている場合、また外壁タイル自体には劣化が見当たらないが、目地の痛みが生じている場合は、防水工事が必要となります。雨漏りを放置すると、建物全体の劣化に繋がりかねません。
外壁タイルの防水工事は、おおむね以下の手順で行われます。
- 1 まず打診チェックを行い、タイルが浮いていないかを確認します。浮いているタイルは補修を行います。
- 2 タイルが汚れている場合や、施工面積が広い場合は高圧水洗浄機で洗浄を行います。
- 3 下地にひび割れや欠損がある場合は補修し、下地処理を施します。
- 4 下塗りとしてプライマー、中塗りとして防水材、上塗りとしてトップコートの順番で塗布し、防水材とトップコートは二度塗りします。
耐久性に優れた特殊アクリル樹脂の透明塗膜をトップコートに用いることで、タイルの剥落防止にも効果を発揮します。
③外壁タイルの洗浄工事
タイルは滅多に色あせや変色することがない外壁材ですが、汚れやカビ、コケ、ほこりなどが付着して変色したように見えることがあります。
また、エフロレッセンスとも呼ばれる白華現象は、タイル目地の内部に侵入した水分が蒸発する際、コンクリート中の水酸化カルシウムと空気中の二酸化炭素とが反応して炭酸カルシウムとなり、白い粉状になってタイル表面に付着するものです。
これらは、高圧水洗浄によって除去することが可能です。さらに光触媒コー ティングを併用することで、汚れやカビ、コケ、ほこりなどの付着を防ぐことができます。白華現象が目地や建材の裏側からの浸水が原因の場合、防水処置を行い、水酸化カルシウム含有量の少ない下地材を用いて下地から修復することで、予防策とすることもあります。
診断から完了まで:マンション外壁タイル補修のプロセス
マンションの外壁タイル補修は、原因によって補修方法が異なりますので、まずはその原因を特定するための診断を入念に行うことが重要です。
劣化原因の診断から補修工事完了までの流れをご説明しましょう。
現地調査・診断
外壁タイルの劣化を調査する方法は、「接触法」と「非接触法」という2種の方法に大別できます。
接触法 | 打診調査法とも言い、打診棒(パルハンマー)を使って外壁を軽く叩き、軽い高音がすればそこが補修を必要とする箇所です |
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非接触法 | 赤外線調査法とも言い、赤外線カメラによる目視で外壁の状態を調査する方法で、近年ではドローンを用いた方法も行われています |
なお、打診調査法も赤外線調査法も、国土交通省による「剥落による災害防止のためのタイル外壁、モルタル塗り外壁診断指針」で規定されている方法です。
補修計画の作成&作業準備
高圧水洗浄でタイルの汚れを落とすだけなら1日か数日で終わる場合もありますが、タイルの張り替えや防水工事を伴うものなら、工事期間は2週間〜3週間に及ぶこともあります。
そのため、タイルの張り替えや防水工事を伴う場合は、工事計画書や工程表を業者から提出してもらうことをおすすめします。大規模修繕の一環として行う場合は、住民や近隣への説明も必要になるでしょう。
大まかな流れとしては、以下のようになります。
- 1 養生や足場などの準備を行う
- 2 施行部分のタイルをはがす
- 3 下地補修とタイルの貼り付け工事
- 4 目地補修工事
- 5 仕上げ作業後、確認をして完了
では、タイル修繕工事の中心となる3と4について、さらに詳しくご説明しましょう。
下地補修とタイルの貼り付け工事
タイルの軽微な劣化の場合は、「エポキシ樹脂注入」により接着剤を流し込んで補強します。あるいは「エポキシ樹脂タイル固定」によってタイル表面に穴をあけ、注入口付アンカーピンを挿入し、注入口からエポキシ樹脂を流し入れます。
タイルの張り替え交換工事が必要な場合は、張り替えが必要な外壁タイルのみを剥がした後、新しいタイルを張っていきますが、この工法には2種類あります。ひとつはセメントと砂を水で練ってモルタル下地を作ってタイルを張っていく、「湿式工法」と呼ばれる方法です。もうひとつは、接着剤を用い、下地に外壁タイルを貼り付けて行く「乾式工法」となります。
目地補修工事
目地はタイルとタイルをつなぐクッション役であるほか、建物への浸水を防ぐ非常に重要な役割があります。目地にひび割れなどの劣化がある場合は、ダイヤモンドカッターなどで古い目地を除去し、下地に水分を吸収させる水湿しを行い、新しい目地剤を充填します。
さらに、塗膜防水を行うことで、目地が劣化して雨水などが侵入するのを予防することができます。防水塗装により、雨水の侵入で内部の壁材や下地の腐食、カビや菌の繁殖なども防ぐことができ、長期的なメンテナンスコストの削減にもつながります。
マンションタイル補修の修繕費用相場
さて、では、気になる工事費用ですが、一般的な目安として下の一覧表を参考にしていただくと良いでしょう。ただし、外壁タイルの劣化状態や工法、防水工事の程度によっても異なります。
タイルの補修内容 | 費用相場 |
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ひび割れ・浮きタイル張替 | 約700〜1,100円(1平方メートルあたり) |
足場仮設 | 約800~1200円(1平方メートルあたり) |
浮き補修 | 約500~900円(1か所当たり) |
タイル張り替え | 約500円(1枚当たり) |
クリア塗装 | 約3,000円(1㎡当たり) |
マンション大規模修繕と外壁タイル補修を成功させるには
マンションの大規模修繕を成功に導く心得として、以下の3点は必ず押さえておきたい重要なチェックポイントです。
- 1 修繕費用を正しく算出する
- 2 何度も補修を要する部分の根本的な解決策を講じる
- 3 竣工時の不具合を見逃さない
また、大規模修繕工事は外壁補修がメインと言っても過言ではありません。外壁タイルの補修費用と信頼できる業者選びは特に成功のカギを握っていますので、以下にそのコツをご紹介しましょう。
相見積もりを取りましょう

マンション大規模工事の費用に占める割合は、建築系工事が最も多く、建築系工事のうち外壁に関する修繕工事(外壁塗装、外壁タイル、シーリング工事)が最も多くなっています。ただし、外壁タイルの補修工事は大規模修繕の回数を重ねるほど、費用割合は低くなる傾向があります。
(出典:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」)
初めての大規模修繕で外壁タイルの補修工事をしっかり行っておけば、後々、外壁タイル補修にかかる費用を抑えられるということです。ただし、最初の大規模修繕で修繕積立金を使い過ぎないよう注意しなければいけません。
まず、外壁タイルの現状をしっかり把握し、その上で複数の業者から相見積もりを取りましょう。そうすることで、外壁タイル補修工事の費用相場がわかります。
信頼できる業者を選ぶポイント
外壁タイルの補修工事を依頼する業者選びは、工事費用がリーズナブルかどうかはもちろん大切なポイントですが、それだけではありません。以下のチェックポイントをご参考いただき、信頼できる業者を選びましょう。
- □見積書や工程表は書類で提出してくれる
- □認可・許可・資格等を取得している
- □実績が豊富(ホームページなどに施工事例などを掲載している)
- □保証内容が充実している
- □説明がわかりやすく、質問にも丁寧に答えてくれる
- □現場調査が入念
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