2025年2月、大規模修繕経験のあるマンション管理組合や住民にアンケートを行ったところ、最も多く挙げられた課題は「金額」でした。ただし、大規模修繕工事費の市場価格との比較や査定を行っていない、もしくは分からないと回答した人は6割にのぼっており、大規模修繕費用の妥当性や透明性に対する疑問が大きいことが分かりました。その中で特に小規模マンションにおいては、「工事費用が高い理由はなぜ?」「適正価格はどれくらいなのか?」という疑問が多く見受けられたのです。
そこで本コラムでは、大規模修繕を検討しているが、どのくらい費用がかかるのかを知りたいという小規模マンションにお住まいの方や管理組合の疑問を解消していきます。
小規模マンションと大規模マンションの違い
マンションは一般的に、小規模マンションは総戸数50戸程度まで、大規模マンションは総戸数100戸以上と言われています。小規模マンションと大規模マンションには共用施設に違いがあり、それぞれのマンション形態によってメリットやデメリットもあります。
このような違いを明確に知っている人は、意外と少ないのではないでしょうか。そこでこの章では、小規模マンションと大規模マンションの違いと小規模マンションのメリット・デメリットについて解説します。
小規模マンションと大規模マンションの総戸数基準
小規模マンションとは法律的に定義されていませんが、一般的には総戸数50戸未満のマンションのことを指しています。大規模マンションは100戸以上を指すことが多くなっていますが、200戸や300戸以上の規模のことを大規模マンションと分類されることもあります。
また小規模マンションの中でも3階程度までの低層の物件は低層マンションと呼ばれるほか、20階以上の大規模マンションはタワーマンションと呼ばれ、敷地内に複数の棟が建つ物件は多棟型マンションと呼ばれています
このような総戸数の違いがマンションの共用施設や立地条件の違いなどに表れ、ひいてはそのマンションの管理費や修繕積立金、大規模修繕費用にも影響を与えます。近年ではタワーマンションと呼ばれる物件も増え、大規模マンションに注目が集まりがちですが、小規模マンションには小規模ならではの魅力もたくさんあります。次の章でその魅力を紹介していきます。
小規模マンションのメリット
総戸数50戸未満の小規模マンションには以下のようなメリットがあります。
居住者同士が顔見知りであり、それが防犯につながる。
小規模マンションは50戸未満ですので、同一建物内に住んでいる居住者は30世帯以下になります。居住者数が少ないので、エントランスやゴミ置き場、駐車場などで顔を合わせることが多くなり、顔見知りが多くなります。そこで、普段は見かけない不審者が建物内にいると、すぐに気が付くようになり、それが防犯につながるのです。
そのほかにも以下のようなメリットがあります。
管理組合での話し合いがまとまりやすい
居住者が少ない小規模マンションであれば、管理組合の総会に参加する人は少なくなり、総会で意見が分かれることも少なくなります。そこで必然的に管理組合での話し合いがまとまりやすくなっています。
駅近の便利な立地にあることも多い
大規模マンションには広い敷地が不要なため必要となり、駅からやや離れたところや郊外に建つようになります。その点、小規模マンションは敷地がコンパクトでも建てられるために駅近や街中の便利な場所に建てられることが多くなっています。
交流会を開きやすい
小規模マンションに住んで顔見知りが多くなってくると住民同士の交流も増えてきます。その結果、お茶会などの小さな交流会が開催されるようになります。
落ち着いた住環境が得られやすい
大規模マンションとは違い、小規模マンションは建物の高さ規制が厳しい閑静な住宅街に建つことが多くなっています。ゆったりと落ち着いた住環境が得られやすいのも特徴です。
小規模マンションのデメリット
メリットが多く、住むには適している小規模マンションですが、以下のようなデメリットもあります。
修繕積立金が高くなる
小規模マンションは総戸数が少ないためにどうしても大規模修繕工事費が割高になりがちです。そうするとどうしても、1戸あたりの修繕積立金の負担が高くなります。
管理費に対するサービスの充実度が下がる
1戸あたりの管理費は安くなりがちですが、大規模マンションであればスケールメリットにより実施できるコンシェルジュや24時間有人警備といったサービスの充実度は下がります。
手厚いサービスや共用施設を望むと管理費が高くなる
大規模マンションに用意されているキッズルームやパーティールーム、フィットネスジムなどのサービスや共用施設を、総戸数が少ない小規模マンションで望んでしまうと、管理費に反映されることになります。
管理費や修繕積立金の滞納が1戸でもあると滞納率が大きく上がる
入居者から管理費や修繕積立金の滞納が1戸でも出てしまうと、総戸数が少ないために滞納率が大きく上がるようになり、大規模修繕の内容の見直しや住民向けのサービスの削減につながる場合があります。
小規模マンションの大規模修繕費用の相場
50戸未満の小規模マンションの大規模修繕工事費用の相場は、3,000万円から5,000万円程度です。1戸あたりで換算すると100万円前後となっています。
以下のサイトも参考にしてください。
マンションの修繕積立金の相場とは?値上げのタイミングや注意点も解説
小規模マンションの平均的な修繕積立金
マンションの修繕積立金はマンションの規模や築年数、専有面積などによって異なりますが、小規模マンションの修繕積立金を1戸あたりの月額で換算すると1万3,000円から1万5,000円程度が目安となっていますが、修繕積立金の目安額の計算方法は以下のとおりです。
【専有床面積当たりの修繕積立金の目安額 × 専有床面積 = 修繕積立金の目安額】
修繕積立金の額の目安については、国土交通省が発行している「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を参考にすると良いでしょう。
小規模マンションの工事費・修繕費用の目安

出典:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査について(概要) 」
国土交通省が発表している「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」によると、総工事金額の内訳は、「建築系工事」 (60.3%)の割合が最も高く、次いで「仮設工事」 (22.8%)、「諸経費①及び諸経費②」 (10.3%)となっています。その中でも建築系工事の内訳は、「外壁関係(外壁塗装・外壁タイル・シーリング工事)」 (49.4%)が最も高く、次いで「防水関係(屋根防水及び床防水)」 (32.0%)と続いています。
大規模修繕工事の各工事における1平方メートルあたりの一般的な金額については、以下のページでご確認いただけます。
費用が高くなりやすい理由とそのカラクリ
マンションの外壁や廊下、ベランダ、エレベーター、エントランスなどの共有部分の修繕費は、毎月支払う修繕積立金でまかなわれます。修繕積立金は大規模マンションの方が高くなると思うかもしれません。しかし小規模マンションの方が総費用は少なく済みますが、合計を1戸あたりの負担額で割っていくために、マンションの総戸数が少ない小規模マンションの方が1世帯あたりの負担額が高くなるのです。
エレベーターについていえば、1基あたりの施工費はマンションの規模による価格の変動はありません。そのため、修繕積立金も加算されてしまう要因となっています。
小規模マンションの大規模修繕で発生しやすい問題
マンションの大小にかかわらず、大規模修繕の工事期間中には騒音やホコリ、臭い、車両の出入りなどが発生します。このような問題は前もって周知・対策を打っておかないと、入居者や近隣住民とのトラブルに発展しかねません。
小規模マンションならではの大規模修繕に関するトラブルもありますので、予め対策をしておくようにしておきましょう。
大規模修繕の工事期間中のトラブルについては、以下のコラムもご覧ください。
修繕積立金の未払いや資金不足
小規模マンションで入居者の修繕積立金の未払いが続いてしまうと、すぐに資金不足となってしまい、大規模修繕工事の遅延・中断や一時金・借入による追加負担が発生する可能性があります。
特に個数の少ない小規模マンションでは、1~2戸の未払いでも大規模マンションと比べて大きく影響し、資金不足に陥りやすくなるのです。未払いが発生したときには、口頭や手紙で督促をし、それでも未払いが続けば債権者の申し立てに基づき、裁判所が債務者に支払いを命じる処分である支払督促の申し立てを行い、場合によっては訴訟などの手続きが必要になる場合もあります。
このようなことで管理組合の煩雑な仕事が増えるようになります。
住民からの「やめとけ」コール
大規模修繕は区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)に基づき、管理組合が総会で決議を行い、区分所有者=マンション住民の同意を得て実施されます。マンションの大規模修繕工事については、区分所有者の3/4以上の賛成があれば可決され、建物の建て替えについては、4/5以上の賛成の賛成があれば可決されます。
小規模マンションは住民同士のコミュニケーションが取りやすいというメリットはありますが、戸数が少ない反面、少数でも反対者が出てしまうと、管理組合の議題の進行が停滞してしまうという欠点もあります。
大規模修繕に対して「やめておけ」というマンション住民が出てきた場合、話し合いを重ね、最終的には訴訟で解決を図る場合もあります。ただし、大規模修繕の決議に反対したマンション住民に対しても、修繕工事の費用負担は義務付けられています。
資産価値に影響する「買ってはいけない」事例
中古で小規模マンションを購入する際に避けるべきことは、以下のようなマンションです。
- 建物の管理状態が悪い。
- 旧耐震基準の物件である。
- リノベーションの制約がある。
- 適切な大規模修繕が行われていない。
マンションの大規模修繕の主な目的は、建物の寿命を延ばし、安全性を確保し、資産価値を維持することです。それにもかかわらず、かえって資産価値を下げる以下のような大規模修繕工事に関連する事案が起きないよう、注意しましょう。
- 管理会社と業者の不正が発覚
- 大規模修繕工事中に業者が倒産
- 売却時に告知義務がある工事中の空き巣が発生
小規模マンションが大規模修繕を成功させるコツ
小規模マンションが大規模修繕を成功させるには、金額的なトラブルや問題につながらないことが重要です。そこでここからは、押さえておくべきポイントを紹介します。
長期修繕計画書の意義と作成方法
長期修繕計画書とは、マンションの共用部分を維持・管理し、将来の修繕工事に備えるための計画書です。10年、20年と長期的な期間を見据えながら、マンションの大規模修繕や定期点検などの予定を記載していきます。
この計画書は、管理会社またはマンションの専門家(マンション管理士など)に作成を依頼するか、管理会社が国土交通省が発行している「長期修繕計画作成ガイドライン」を参考に作成していく方法があります。
管理組合にマンション管理に関する専門知識をもつ組合員がいれば、エクセルを使って長期修繕計画を作成しても良いでしょう。
小規模ならではのコストダウン手法
小規模マンションの大規模修繕費用をコストダウンするためには、以下の方法が考えられます。
外壁タイルの修繕方法を検討
外壁の修繕をする際にはブランコ工法やロープアクセス工法があります。これらの工法は足場を必要としませんので、大規模修繕費用のコストを抑えることができます。
国や行政の助成金・補助金制度を活用
大規模修繕工事に対する補助金・助成金制度は数多く存在します。工事費の1/10~1/2程度を補助してくれる「大規模修繕工事費用補助」という補助金や、50万円以上を支給しくれる「劣化診断補助事業」という補助金などがありますので、大規模修繕工事の際に活用するようにしましょう。
詳しくは国土交通省や各都道府県・区市町村のホームページをご覧ください。
照明方法を検討して必要な電気代を削減
マンション内の照明は24時間点灯しているものもあります。LED照明を導入することや、照明の使用時間を見直すことで、コストダウンにつながります。
小規模修繕のススメ
小規模修繕とは、大規模修繕の代わりに小規模で実施したり照明をLEDに交換したりする小規模更新のことではなく、大規模修繕の補完的な役割を果たすものです。たとえば、外壁のひび割れの補修や屋根の部分的な雨漏りの対応、水回りの設備交換などが当てはまります。
マンションを抜本的に修繕するものではありませんが、小規模マンションで小規模修繕を行っておくことで、建物の寿命を延ばし、大規模修繕の負担を軽減する効果があります。
ただし、外壁の補修・塗装のような足場が設置されていないとできない工事は、一度にまとめて大規模修繕工事として実施した方がコストダウンにつながります。
信頼できる業者の選定とチェックポイント
小規模のマンションで大規模修繕工事を行うには、同規模のマンションの修繕実績が豊富である施工業者を検討することが重要です。その上で管理組合自らが複数の施工業者から見積もりを取り、工事の内容と足場の必要性を検討していきます。
また、大手管理会社だと、依頼する施工業者も依頼することが多くなります。しかし大手の施工業者はどうしても中間マージンがかかりコストが高くなりがちです。そこで見積もりを管理会社任せにしないことも大切です。
小規模マンションの大規模修繕は実績豊富なRYU-SHINへご相談を
マンションの大規模修繕工事に対して豊富な実績を持っているRYU-SHIN(リューシン)。万全のフォロー体制を持つ強みを活かして、お客様の信頼にお応えするRYU-SHINにお任せください。
定休日 土曜・日曜・祝日
メールでのお問合せは24時間受付中






